技術開発のスピードが加速する中、中小企業にとって知的財産権の取得は、競争力を維持・向上させるための重要な経営戦略の一つとなっています。その中で、特許権と実用新案権は、技術を保護する権利として注目されています。
今回は、この二つの権利の特徴を比較しながら、企業の状況に応じた最適な権利取得の方法について解説します。
特許権と実用新案権の主な違い
1. 権利取得までの期間
- 特許:審査に時間がかかり、通常1-3年程度
- 実用新案:無審査で、2-3ヶ月程度で権利化が可能
2. 保護対象
- 特許:物品、方法、物質など幅広い発明が対象
- 実用新案:物品の形状、構造、組合せに関する考案のみ
3. 権利の存続期間
4. 審査の有無
- 特許:審査官による実体審査あり
- 実用新案:基礎的要件のみの形式審査
戦略的な権利取得のポイント
1. 製品のライフサイクルに応じた選択
- 製品寿命が短い(5-10年程度)→実用新案が有効
- 長期的な保護が必要→特許が適切
2. 技術的な特徴による選択
- 方法やプログラムなど→特許でないと権利が取れな
- 形状や構造の工夫が中心→実用新案が適している
3. 事業戦略に基づく選択
- 他社へのライセンス供与を考えている→特許が有利
- 早期の権利化が必要→実用新案が有効
4. 予算との兼ね合い
- 特許は審査請求料等のコストが高い
- 実用新案は比較的低コストで権利化が可能
実用新案を選択する場合の注意点
1. 権利行使時の制限
- 権利行使には実用新案技術評価書の提示が必要
- 評価書の内容が否定的な場合、権利行使のリスクが高まる
2. 保護範囲の限定
- 物品の形状等に限られるため、方法や物質は保護されない
- 権利範囲が比較的狭くなる傾向がある
特許を選択する場合の注意点
1. 審査期間への対応
- 権利化までに時間がかかるため、その間の模倣対策が必要
- 審査請求は出願から3年以内に行う必要がある
2. コスト管理
- 出願から権利化までの費用が多額になる場合がある
- 年金の管理も必要
両制度を組み合わせた戦略
1. 実用新案からの特許出願への変更
- 出願から3年以内であれば特許出願に変更可能
- 市場の反応を見ながら判断できる
2. 複数の権利の組み合わせ
- 核となる技術は特許で保護
- 周辺技術は実用新案で保護
まとめ
知的財産権の取得は、企業の成長戦略において重要な役割を果たします。特許と実用新案は、それぞれに特徴があり、一長一短があります。自社の技術、事業戦略、予算等を総合的に検討し、最適な権利取得の方法を選択することが重要です。
自社の技術を適切に保護し、競争力を高めるために、特許と実用新案を戦略的に使い分けていきましょう。